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雪乃・舞依と志乃神・晃の設定などを徒然と、いや適当に・・・。SSとかバトンとかで ============================================================  このブログにおいてある作品は、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のイラストとして、作成を依頼したものです。  イラストの使用権は雪乃に、著作権は書いていただいたイラストマスターに、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。 ============================================================
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人でなしの話

「よし、埋葬完了」
「・・・・・・」

 



迷宮亭から離れた森の奥深く、ただ一つ開けた場所にある、墓地。
その場で二人の男女が真新しい墓を前にたたずんでいた。
今しがた埋め終えたばかりで、肩にシャベルを担いだまま
墓標代わりのライフルを突き刺し、何度か叩いて地面に突き立てる。
その様子を見つめる女は死人のように青い顔で、ただ立ち尽くすのみ。


「どうした?」
「貴方は・・・泣かないんですか」
「泣くようなことか?」

沈んだ女の声にも、男はそっけなく返す。

「・・・なんで、泣けないんでしょうか」
「俺が泣くことじゃないと思ったからだ」
「貴方だけじゃないんです」
「ん?」
「私も、泣けない」
「・・・ソレこそ俺が知るか、お前の事だろうが」
「哀しいんですよ、とても・・・それこそ半身を失ったみたいに」
「まぁ家族だからな、そんな気持ちにもなるさ」
「・・・なのに涙が、流れないんです」
「・・・・・・一人にした方が良いか?」

シャベル、弾薬の入れ物、その他埋葬に必要だった諸々をまとめながら女に問う。

「すぐに追いつきますから・・・今、少しの時間を下さい」

背を向け続ける女に対し、男は何も答えず、ただその場から足を運び始める。

「・・・」

完全に気配が消えた所で女は、覚束ない足取りで墓の前に膝をつき
・・・その銃身を愛しげに抱きしめた。

「お休み・・・」

胸の奥に溜まる澱を吐き出すように強く強く、
唸りを上げても尚吐き出される澱とは対照的に一雫も零れない涙・・・
己の薄情さと家族の縁を恨めしく思いながらも、
しばらくの間、人狼の慟哭が森の奥に響き渡った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・


森の半ばで別の少女が男と対峙していた。

「ふぅ・・・」
「終わったの?」
「あぁ、全部・・・埋めてきた」
「・・・(げしっ」

男が隣を通り過ぎる際、少女が力強く脇腹を蹴り上げた。
痛くは無い、所詮非力な子供の一撃である故に。

「なんだ?」
「・・・間に合わなかった」
「気にすんな、お前のせいじゃねーよ」
「間に、合わなかった・・・」
「ほっとけ、自分で勝手に逝ったんだ」
「・・・冷たいね」
「お前ほどじゃない」
「・・・・・・最っ低」
「あぁ、自覚してる」
「・・・・・・・・・」
「好きなだけ泣いてろ。ガキなんだからよ」

軽く頭を撫でようとして、叩き落とされる。
射殺さんと言わんばかりの視線がその小さな少女から向けられた。

「最後・・・泣いてたよ」
「あぁ・・看取ったんだよな、哀しんでたか?」
「ん・・・笑ってた」
「ならいいだろ」
「勘違いしてただけなのに・・・笑ってた」
「嘘でもいいんだよ」
「・・・」
「自己満足の中で死んだんだろうしな」

睨まれたまま少女に背を向け、男は屋敷へ歩を進める。
残された少女もまた立ち尽くしたまま、空を見上げ、涙を零す。

「死んでも幸せとか・・・理解できない。そんなこと、分かるわけ無いよ・・・」

 

===

 

戦場で見つけたときには、もう終わってた。
傷だらけになって、見る影もなくなった姿で、転がった人間。
真っ赤な血溜まりと、真っ白になった身体。
自慢の相棒であるライフルが、傍らでその銃身を半ばから曲げられ、
銃器として最早死んでいる。
怖くて、怖くなって、否定したくて無理やり身体を抱き起こして白燐を纏わせた。
冷たくなった身体が知っている家族のものと余りにかけ離れていて、
否定し続けている最悪の予感が幾ら消しても後から後から沸いて出る。


「起きて・・・起きて。まだ大丈夫、大丈夫だから」
「・・・・・・・っ・・・ぁっ」

奏甲をかけ始めると、苦悶の声が上がる。
苦しむことを喜ぶと言うのも酷い話だけれど。
まだ、苦しめるほどには生きてる。
まだ間に合う、急いで此処から―――

「あー・・・久しぶりだぁ・・・雪の匂い」

奏甲に包まれながら、濁りきった少年の目は少女に向けられていた。
屋敷で共に暮らす、家族の一員であるはずの少女に向けて
―――久しぶりと、言った。

「わんこ・・・?」
「あ、あはははは・・・・あー、うん」

傷だらけのまま幸せそうに微笑んで、流暢に話始める。
・・・様子が、おかしい。元気に喋っているのに、何かが、ずれて

「わ、わんこ・・・しっかり・・・私が、分かる?」
「久しぶりだからって酷いなぁ・・・忘れ切れるわけ無いのに」
「よく見て・・違うよ!久しぶりなんかじゃない!!」
「一杯怒らせるようなことしたからさぁ・・・もう、会えないと思ってたよ」

そう、此処にいない誰かを見て、話初めているような。

「冗談はいいから!・・・嘘でも、怒るよ・・・!」
「ははは、ごめん・・・ごめん」
「まだ、間に合うから・・・帰ろう、学校・・・お家まで」
「うん・・・かえろっか」

会話が繋がっているようで繋がっていない。
終始にこやかなまま誰かに向けて話続ける少年。

「怪我治ったらさぁ・・・またデートしようよ」
「誰に・・はなしかけてるの・・・!」
「今度は、もっと、真面目に・・・生きるからさぁ」

再び瞼を閉じようとする少年。
その姿から不安に駆られ、ついには傷口を叩いて無理やりにでも
意識を保たせようと悪あがきを繰り返す。

「起きろ!起きろ!!ねるなぁ!!」
「会えたら・・・安心しちゃったからさ。少しだけ、寝かせてよ」
「後で好きなだけ寝ていいから、今は・・今は・・・」

もう、諦めている。ソレがありありと浮き彫りになったその言葉に、
堪えきれない涙が零れて落ちる。
次から次に流れ落ちる涙が頬を伝い、少年の顔まで濡らしていく。
不意に少年の腕が上がり、指先で乱暴に目元を拭う。

「これから、また一緒だからさ・・・今だけ、ね」
「勘違いしたまま・・・なんて・・・ひどい」
「はあぁ・・・ごめん、そろそろ、本当に限界みたい」
「大丈夫、大丈夫だから・・・私を見て、笑わないで」

その言葉に何も返さず、抱えられたまま空を仰ぎ見る。

「いい星だねぇ・・・星詠らしく、また旅に出たいなぁ・・・」
「好きなだけ、行けばいい・・・生きて、まだ生きて!!」
「一緒に行こうよ・・・『くつきさん』」

「私に、言うなぁぁ・・・!!」

大丈夫、大丈夫と頭をなで続け。
最後まで幻影を見つめたまま、何かを呟いて。
―――抱えた身体から、一切の力が抜け落ちた。

「・・・ぁ・・ぁぁぁ・・・ッ」

奏甲で纏わりついていた白燐蟲がその場で霧散し、私の中に還る。
癒すべき命を見失った蟲が、還って来た。

 

 

「っ・・・馬鹿ぁぁーーーーーー!!」

 

 


お世辞にも、仲が良かったとは言えない。
義理の家族の一人だった肉塊を抱いて、ただ涙を流す。
最後の最後までふざけた態度で、死んだ義弟を抱いて
私は戦場から逃げ出した。


===

男は屋敷に戻ると少年の部屋に入り、盃とお神酒を机に置いた。

「死んだことはもうこの際置いておく。とやかく言っても死人は死人だ」
『ま、そーなんだけど』
「こんな時まで変わらんかったなぁ、俺も、お前も」
『結局、これがボクのスタイルだったし』
「いつか死ぬ。ただ、お前が早かっただけだ」
『・・・だね』
「幻覚での逢瀬、か」
『本当は、分かってた』
「どうせ、気づいてたんだろうがな」
『気づきたくなかった』
「誰に抱かれてるかぐらい」
『雪は雪でも、凍える吹雪の匂いだったから』

「だから、最後の言葉はきっと」
『最後だけは本当に』
「『嘘だけど』ってところか」

独白しながらお神酒を注ぎ、盃を満たしていく。
並々と注がれ、星を映すソレを対面に置き、
自分にも小さな盃に一杯の水と一滴の酒を注ぐ。

「俺はまだまだ能力者だからな。同じ盃は干せんが」

嘘吐きと愚か者に乾杯、そして良く眠れと。
薄められたお神酒を飲み干し、盃をそのままに部屋を後にした。

男が部屋を抜け、扉が閉まると主がいなくなった部屋は静まり返ってしまい
・・・ただ一度、何かを置く音が響いた後は静寂に包まれた。

 

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プロフィール
HN:
雪乃・舞依
年齢:
29
性別:
女性
誕生日:
1994/09/22
職業:
中学生雪女
趣味:
読書、スライム弄り、他人と(で?)遊ぶ
自己紹介:
外の事をあまり知らなかった為に人と上手くかみ合う会話が数人にしか出来ない。喋りも沈黙の多いまったりペースだが人を弄る時だけは素が出て一方的に捲くし立てて相手を貶める。
いたずらっ子だが時々常識外れの大ぽかをする。
動物の鳴き声で幾つかウソを教えられている。
(例:猫はメェ~って鳴くんだよっ!?)
スライムマスター(幻獣使い?)
最近は割とほわほわと彼氏に甘えている。
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