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雪乃・舞依と志乃神・晃の設定などを徒然と、いや適当に・・・。SSとかバトンとかで ============================================================  このブログにおいてある作品は、株式会社トミーウォーカーのPBW『TW2:シルバーレイン』用のイラストとして、作成を依頼したものです。  イラストの使用権は雪乃に、著作権は書いていただいたイラストマスターに、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。 ============================================================
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迷宮亭・ユキノの部屋

迷宮亭の入居者は安定しない。
隔離施設だから入る人が多いと言うのもあるけど。
きても相手の精神が受け容れ切れない場合、別の施設に送っているから。
または、発作的に暴れた際に取り押さえられず、ぱぁん、で人生の幕を閉じるから。
だから、実は今のように10人以上長く留まっている状況は珍しい。

私は、割とすぐに馴染んだ。元々箱庭に住んでいたから。人がいること以外、何も変わらないと言えば変わらないし。
元々此処で生まれ育った晃みたいなのとは違って、私は引き取られてきた。
だから、此処にきたときは私がいて、晃が居て、九尾乃がいて、三馬鹿がいて、全がいた。
もっと居たけど、その時はまだ話さなかったか、もう居なくなったか。

安定しはじめた館に、私の居場所はある。

迷宮亭・志乃神幻宗(当主)の部屋

上座に座り、横柄に部屋に居る部外者を見下ろしている妙齢の女性。
既に齢40に差しかかろうとするはずのその女は、最盛期の美貌と力を保ったままである。
この女は珀森&獅子桜の力と桜耶の情報収集力を用いているとはいえ、
コノ能力者だらけの監獄を実質的に仕切る真のボスである。

その当主から、明珠・銃音としてではなく星詠・■に対しての唐突な呼び出し。
何の用か、いや、出来れば用が有ってすら御目通りもしたくない人物からの呼び出しだ。
言い知れぬ不安と何かの悪意を感じずにはいれなかった。

「明珠、いや、星詠の男よ。本日呼び出したのはほかでも無い、ちと貴様に用があってな」
「なんでしょうか、御当主殿」
「うむ、貴様には悪いがちと契約違反があった」
「記憶にございません、何かの間違いで

「否、間違いはありえぬよ」

有無を言わさぬ笑顔での威圧。
この一族は本当に……どうしてこうも笑顔の方が危険度が増すのか。
けれどその威圧に負けているようではこのままボクの罪が確定してしまう。
事実、何を違反したのかの心当たりが全く無い。

「・・・であるならば情報源をもう一度確かめなおすべきかと」
「喋ったのが貴様の連れてる子狼でもかえ?」
「…この子はただの狼ですが?」
「変身したスッパとは言っておらんよ。ただ、その狼の首につけたカメラから見ておったのでな」
「チッ、またおかしな事を…」
「ほほほ、何も悪事を働かねば問題は無い代物ではあろう?」
「(確かにその通りだけどさ・・・)何も無いときから仕掛けないでいただきたいものです」
「定期的に周期ごとにつけておるだけの事、故に貴様には悪いが、と前置いたでは無いか?」
「悪いと思って無いでしょう」
「いいや?貴様、運が悪かったのう」

撮られていたこと自体は良い、桜耶の情報網なら遅かれ早かれ筒抜けになる。
だから規則に反した時点でアウトだと思って良い。
しかし、いつの話だ?僕自身の記憶を掘り返しても全く検索しきれない。
ごろごろ理由がでてくるのならともかく、何一つ引っ掛かっていない。
していない、僕は規則など破っては居ないはずだ。

「その様子では、何が違反か分かっておらんな?」
「御当主様は気分屋ですから、ムカついただけで処分といいかねないかと」
「処分品を廃棄する事が悪いかえ?」
「いえ、全く」
「じゃろう?故に今回は貴様が処分品になっただけのこと」

人を食ったような珍妙な笑みを浮かべてからからと笑う当主。
志乃神辺りが見たらぶん殴ってるだろうな、と思いつつ質問を続ける。

「気分で決めたのでは無いでしょうね?」
「理由は違反、処分は相応にな」
「何も違反した覚えがありませんが?」
「覚えがなくとも違反は違反、大人しく諦めい」
「納得しかねます」

食い下がる僕を見据える当主の瞳、その奥の闇に覗き込まれた瞬間。
僕は壁に叩きつけられた。
何が起きたのか一瞬理解が追いつかない。強烈な音と痛み、それと首を締める何かの存在に感覚が追いついてから悟る。
当主が上座から滑るように走り、ボクの首を掴んで叩きつけたんだ。
ノドの奥から苦いものがこみ上げる、こみ上げた上で口元まで上がらない。
一般人の癖になんて握力で締め付けてくるんだ、この女。

「この戯け」
「ッ!!」
「私も道楽や暇潰しで貴様らを飼っている訳では無い」

手を離すと共に真上から刈り取るような貫手を持って地面に叩きつけられる。
圧迫感はなくなったが今度は衝撃で息が詰まった。

「っはぁ・・・はぁ・・・!!」
「私はな、道理にそぐわぬ貴様らを矯正してやる為だけに此処にいる。不肖の義理息子、娘ともどもな」
「・・・・乱暴っ・・過ぎ、じゃ・・・」
「貴様は言わんとわからんようだ。故に手加減無用」

其処から先は、能力者たち一般人とは思えないほどのワンサイドゲーム。
暴力と言う名の嵐の前に、そもそも戦いになるまでも無い虐殺模様。
ひとしきり殴り終えると気が済んだのか、はたまた疲れたのか
僕の顔を掴み、無理やり顔を合わせて向き会う体勢に。

「これ以上私に手間をかけさせないでほしい」

泣いていた。今まさにボクを蹂躙していた鬼が、抑えることなく滂沱の涙を流していた。

「私自身が手を下すには、長く居つかせすぎた」
「・・・無実で、罪に問われても・・・」
「どうあろうと貴様はうちの原則を破った。
 故に此処の住人として、認めるわけには行かない
 詳細だ。貴様の破った事柄と、処分を書き留めている」

それだけ言うと僕の身体は持ち上げられ、そのまま部屋から追い出される。
投げ出す時に懐に手紙をねじ込んで。




痛みが引くまで待ち、その手紙を開くと、何故当主がこうなったかあっさりと納得した。
そりゃそうだよね。一応此処、隔離施設だしね。危険な兆候が見られれば、他の住人が危ういから。

「そーだね・・・なら仕方ないよ、ほんと」

「ボクに罪があることを認めます」

「ボクが悪であることを認めます」

「ボクが愚であることを認めます」

「だから、僕は退場しよう」


門から外に出て、迷いの森に入る。
慣れ親しんだ道なら迷う事はなくとも、関係の無い道ならそうも行かない。
それに、この森の動物は強暴だし。

此処で終えよう。ダラダラ続く人生も逃げの一手。
銃口を額にあて、深く深く深呼吸。

最後に空を仰ぎ見て、引き金を引き絞る。

耳元で、パァン!と、渇いた音が聞こえた。


======

迷宮亭の原則 その3
悪意を持って悪意を振りまく事は否定するべき事では無い。
ただし、好意を持って悪意を蒔いた者は容赦なく断罪する。
地獄への道は身勝手な善意で敷き詰められていると言うこと、努々忘れる事なかれ。

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プロフィール
HN:
雪乃・舞依
年齢:
29
性別:
女性
誕生日:
1994/09/22
職業:
中学生雪女
趣味:
読書、スライム弄り、他人と(で?)遊ぶ
自己紹介:
外の事をあまり知らなかった為に人と上手くかみ合う会話が数人にしか出来ない。喋りも沈黙の多いまったりペースだが人を弄る時だけは素が出て一方的に捲くし立てて相手を貶める。
いたずらっ子だが時々常識外れの大ぽかをする。
動物の鳴き声で幾つかウソを教えられている。
(例:猫はメェ~って鳴くんだよっ!?)
スライムマスター(幻獣使い?)
最近は割とほわほわと彼氏に甘えている。
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