Dog or Wolf?

隔離世亭　化粧室

「・・・不覚です」
頭から爪先まで完全に濡れ鼠になって鏡の前に立ち尽くす。
「皮･･･匂いが強くなり易くて・・・嫌いなんですけどね」
だれが紅茶を外に運ぶ途中に頭上から水を溜めたタライが落ちてくるなどと思うだろう、
それも窓の下や水場に近いところではなく・・・ただの木の上からだなんて。

紅茶とポットとカップがのったお盆こそ体をクッションにして無事に済ませたものの
代わりにメイド服・サングラス・首輪が揃って全滅してしまった。

「服は・・・場所が場所ですし、布一枚でも問題は無いですけど･･
首輪だけは･･代えが無いんですよね」

普段から首輪を外さない理由は精神的なトラウマと自己の保護、
それと・・・傷跡を隠すため。

つけ始めた理由はダレカに強制されたから。
外せないトラウマはその時の痛みを思い出すから
・・・もっとも、４～５秒ほどの幻痛が走る程度だけれど。
その4～5秒あとの為に自己の保護、精神的なブレーキといいますか
　テンションが異様に高くならないように抑える物として。
傷跡、嗜血症の誰かに血をあげる時の牙の痕と　ダレカに殺されかけた時の傷。
どちらも小さいものとは言え白い肌の上ではどうしても目立つので、
ついでに隠せるように大きめの首輪にしている。

「本当は、無くても落ち着けるようになればソレが良いんですけど･･ね」
流石に濡れたままだと落ち着きませんし・・・そう呟いて服を着替える。

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「あのタライ・・・誰が仕掛けたのかはわかりませんが･･･
後でキツイお仕置きが必要ですね」
服は着替えたとは言え、皮製の首輪が拭いてもじっとりと首元に不快感を与え続けてくる。
・・・なんでしょう、とてもドス黒い気持ちが心の奥底より沸いてきますね。